個別指導塾の指導形態と講師のお仕事内容
「個別」という日本語から、1人の生徒さんに1人の先生がついて、各生徒にカスタマイズした指導をする「塾にいる家庭教師」に近いイメージをお持ちの保護者の方が多いようです。みなさんは、「個別指導」と聞いてどんな風にイメージされているでしょうか。
塾によっても少しずつ違いますが、たいていは、1つの教室にパーティションで区切られたスペースが複数並んでいて、通常1名から5名程度までの人数の生徒に対して先生が移動しながら指導する形式が「個別指導」と呼ばれています。
個別指導塾講師の「スキル」
個別指導の場合は教材を手元に置いて1人の生徒に対して教える形をとるため、集団指導ほど高度な科目の知識は必要とされないかもしれません。ただ、よっぽど高学力の受験マスターでない限り、短時間でも授業の準備はした方がよいでしょう。生徒に聞かれてその場で答えられないと信頼をなくします。
「○○先生、『先生』なのに、この問題に答えられなかった」と家で保護者に言いつけられたり、同じ部活の子に言いふらされたりなんてこともあり、かっこう悪いです。
個別指導の塾講師に強く求められるスキルとして、「生徒個人相手のコミュニケーションスキル」と、指導生徒が2人以上になる場合の「指導のバランスを取るスキル」をとりあげたいと思います。
生徒個人相手のコミュニケーションスキル
個別指導は、何よりも生徒との距離が近く、近くにいる時間が長いことが特徴的です。集団指導以上に、人間関係が指導の成果に影響を及ぼします。
昔「おじいちゃん、お口くさ~い」という入れ歯洗浄剤の宣伝がありましたが、口がくさいとリアルにくさい距離なので、指導の時間中、生徒に不快な思いをさせ続けることになります。
お口くさい先生の授業に集中するのは難しいですよね?コミュニケーションの前提として香水や服装も含めて身だしなみには気をつけましょう。
さて、少し話題がずれました。まずこのスキルで重要なのは話を聞くことです。生徒の気分、指導分野の理解状況を把握するのは当然として、何が好きか、どんなことに興味を持つかも把握できるとよいです。
その中でみなさん自身が興味を持てそうな分野から「勉強」しましょう。男子生徒、女子生徒ともに人気のワンピース等はよいかもしれません。塾は勉強の話のみするところと思っている生徒には、勉強関連のウンチクが良いでしょう。そんな子にKYにもアニメの話なんかすると間違いなく馬鹿にされます。「○○って、キモオタ…。」と言いふらされていた先生を知っています。既に「先生」でなく呼び捨てにされています。。。
ここで、講師アルバイトをされる大学生のみなさんに注意してほしいことがあります。マンガやアニメの話をしたりすることの目的は、生徒と楽しくおしゃべりすることではありません。
緊張して質問できなさそうな生徒の緊張をほぐしたり、部活やテスト勉強に疲れている生徒の気を紛らわせたりして、あくまでも学習の意欲を取り戻したり、高めるためのものです。
私も、その昔、ただただ楽しくナルトの話で盛り上がり、生徒と高笑いし続けていたら、こっぴどく怒られた失敗経験があります((+_+))。目的を忘れないようにしましょう。
指導のバランスを取るスキル
上の「指導形態と講師のお仕事」で書きましたが、先生1人に対して生徒5人くらいまでが「個別」指導です。
指導・問題の解説は生徒1人に対して行いますので、1授業80分で4人の生徒を指導するなら、1人の指導時間は均等割で20分が目安となります。
ただし生徒の学年、理解力はさまざまですから、実際には均等割ではダメで、状況に応じたメリハリのあるバランスを取るスキルが個別指導の講師には求められることになります。
ちなみに、同じ時間に教える生徒は力が著しく低い子ばかり、あるいは仲良しのおしゃべり仲間ばかりといった場合は、教室長や力のある先生に「かわいらしく」ヘルプを求めましょう。バランスを取る以前に、生徒の組合せに問題があります。
バランスをうまく取れないとどうなるか?当たり前ですが、生徒も保護者も教えてもらうために塾に来ています。教えてもらえないまま帰れば、生徒の不満、保護者の不満につながります。気付くと自分が好きなタイプの生徒ばかりに時間を使っている、、、といったことも人間なので起こりえることです。注意しましょう。
複数科目を教えられると、生徒・保護者にも、塾にも喜ばれます。 個別指導の塾では、「個別」とうたっているだけに個々の生徒のニーズに合わせて科目、時間が決まりがちです。1科目しか指導できない先生が増えると、どこかで調整ができなくなります。そうなると、その科目が得意でない先生が無理に教えたり、生徒に授業日程の変更を求めたりといったことが起きることになります。生徒・保護者にとっては勿論のこと、塾にとってもよくない状況になってしまいます。 特に数学、理科といった理系科目はできる先生が少ない傾向があるため、理系科目で複数科目ができる方は塾のバイトで有利!と言われています。周りが出来ないことができるということで、生徒からの尊敬は勿論、同僚の間でも尊敬を集めたりします。この際、中学数学マスターを目指すのは、いかがでしょうか? |
個別指導塾の「時給」と「やりがい」
時給は一般的に、集団指導の塾講師より低くなります。たとえば、同学年、同科目の14人の生徒がいるとして集団指導なら1人の先生で教えられるところ、1対2の個別指導なら7人の先生が教えるために必要となります。単純に7倍の人件費を保護者の方々に請求することが出来ないことを考えれば、分かりやすいかと思います。
やりがいについて言えば、集団指導とは異なるやりがいがあるように思います。変な日本語かもしれませんが、集団指導の「"広い"やりがい」に対して個別指導は「"深い"やりがい」を感じやすいでしょう。
指導中に共有する時間が単純に長いため、気分転換の「無駄」話だけでなく、悩みを共有することもあります。ときには各生徒に応じた未来の話をする機会もあるかもしれません。ただ、語りすぎると「オヤジくさいー」とか「説教ババア」とか言われますのでご注意を。
個別指導塾の「恋愛」
個別指導の塾は恋愛しやすい塾と言えます。塾の中でも講師の大学生数、大学生比率が最も高いので、恋愛イベントも起きやすくなります。
『恋愛、大いに結構!!』という塾からNGという塾まで様々ですが、いずれにしても、生徒がいるところでいちゃつくのは生徒・保護者がもっている「塾講師」のイメージに合いません。
塾内でいちゃつくのも、帰り際に手をつないで帰るのもNGです。塾講師も、人間なので恋愛するのが普通ですが、生徒の目に触れるのは、極力避けましょう。
『生徒の成績を上げるという共通の目的に向かって頑張る2人が恋に落ちるなんて素敵よね~♪』というのはイマドキ珍しいロマンチストな友人のK苗さんのお言葉ですが、生徒の成績向上に貢献できるならという条件付きで「個人的には」アリと思います(こんなこと書いていたら怒られそうですけど。。。)。
なお、繰り返しになりますが、「生徒との恋愛」は絶対NGです。年上で自分より勉強ができて。。。というだけで恋に落ちる生徒もいますから、大人として、またお金をもらって働くプロとして気を付ける必要があります。自覚をもって注意をしましょう。訴えられたりしたら、一生を棒に振りかねません。